高麗人参の漢方としての役割

高麗人参は古くから漢方の材料として使われています。西洋医学が病気や怪我を治療することを目的としているのに対し、漢方では、病気になりにくい身体へと少しづつ導いていくことを目的としています。

そのため、基本的には即効性はなく、その分、副作用も比較的少ないのが特徴です。 ここでは、高麗人参が使われている漢方を紹介していきます。

人参養栄湯

人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、病気や手術の後などで体力の弱っている時に、通常の状態への回復を目的として使われる漢方です。身体を温める作用があることから、冷え性や咳止め、貧血や寝汗などの場合にも利用されます。

人参養栄湯には高麗人参をはじめ、桂皮(シナモン)や陳皮(みかんの皮)の他、芍薬(しゃくやく)などが配合されています。

人参湯

人参湯(にんじんとう)は、胃腸の調子を整える目的で処方される漢方です。日常的に胃の不安を持つ人や、下痢や腹痛、嘔吐や胃炎などの症状の緩和に使われています。

人参湯には、高麗人参の他、甘草(かんぞう)や蒼朮(そうじゅつ)、生姜を乾燥させた乾姜(かんきょう)が配合されています。

半夏白朮天麻湯

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)は、冷え性や胃腸の弱さを改善するために使用される漢方です。頭痛やめまい、立ちくらみなどの症状を和らげる用途があります。

半夏白朮天麻湯には、高麗人参や生姜(しょうきょう)、乾姜(干した生姜)や麦芽、身体の余分な熱を抑え、身体を温める作用のある半夏(はんげ)などが含まれています。

白虎加人参湯

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)は、身体に溜まった熱を適度な温度へと整えるために使われる漢方です。白虎は中国の四神のひとつであり、西を護る神として知られています。

白虎加人参湯は、高麗人参や甘草、知母(ちも)や石膏(せっこう)などが配合されており、喉の乾燥やほてりといった症状や、皮膚のかゆみの緩和に使用されます。

参苓白朮散

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)は、下痢などに対して処方される漢方です。胃腸の風邪に使われることもあります。冷え性や食欲不振や貧血などの緩和にも使用されます。

参苓白朮散は、サポニンが含まれる高麗人参と桔梗、過度の発汗を抑制する白朮や、余分な熱を取り除く甘草などが配合されています。

桂枝人参湯

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)は、比較的胃腸が弱い人や冷え性に悩む人に処方される漢方です。お腹の風邪や下痢などを緩和させ、身体を温めて胃腸を良好な状態へと整える働きがあります。

桂枝人参湯は、シナモンでおなじみの桂皮(けいひ)と高麗人参、甘草や乾姜などが配合されています。

まとめ

高麗人参が使われている漢方には、人参養栄湯や人参湯、半夏白朮天麻湯や白虎加人参湯、参苓白朮散や桂枝人参湯などがあります。高麗人参の成分であるサポニン(ジンセノイド)が持つ、身体を温める作用や胃腸を整える働きが、生薬としての効果につながっているのでしょう。